熱風ヒーターSAH,SAHDタイプ,Sシリーズ構造 改良点の詳細を解説
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   熱風ヒーターSAHの改良点 2012〜2014


  超小型,高温熱風ヒーターとして長い歴史のあるSAHシリーズですが、常に
  さまざまな改良を加えてきました。その中でも特に2012年〜2014年にかけて
  画期的な改良を行っています。ここではその内容を詳細に解説します。

  HD-coilに関しては熱風ヒーター以外への応用も提案しています 123 
            
         内 容  
@HD-coilの採用
   発熱体サイズが約1/2, 耐圧縮強度は数十倍, 高温長寿命
1
A発熱体コイル支持方式の改良
  HD-coilの高耐風圧性能を活かせる高強度支持方法
B熱風ヒーター新構造 (Sシリーズ構造) 
  HD-coilのコンパクトさが活かせるコンパクトな熱風ヒータ構造
     発熱体の支持構造改良
 
        新しい熱風ヒーターの構造  Sシリーズ
 
 特許,特許出願,公開技術情報を含む


 上:従来発熱体 下:HD-coil発熱体


 上:従来発熱体 下:HD-coil発熱体
      
   
 @ HD-coilの採用      
従来品SAHヒータの発熱体に比べると

@同じ能力ならば寸法が約半分
A同じサイズならば容量が約2倍
B耐風圧が20倍以上。耐震,耐衝撃性も優秀
C同じサイズ,同じ能力ならば太く長い電熱線は高温で長寿命

HD-coilは従来の密着花巻コイル発熱体を赤熱状態で軸方向に約1MPaの圧力を加えて圧縮して作ります。従来の花巻コイルは0.05MPa程度までしかその形を維持出来ず、強い風圧が加わると潰れてしまいます。均等に潰れるのならばよいのですが、熱風ヒータの場合には先端の方が縮み、エアー入口側に近い方は伸びるという著しい不均一が生まれ、先端部の詰まった所が過熱して焼け切れてしまいます。また熱風ヒータ以外のヒーターへの使用でも、従来の花巻コイルでは垂直で使用すると重力により上部が伸び、下部が縮みます。こうなると発熱が著しく不均一になるとともに、縮んだ下部が過熱して短寿命になります。

HD-coilは赤熱状態で約1MPaを加えて作るのですから、当然の事ながら、その程度の圧力が加わってもそれ以上は縮みません。それどころか更に大きな数MPaの圧力が加わっても、それ以上、ほとんど変形することはありません。
この卓越した耐圧縮力はヒーター以外にも応用可能です。    HD-coilの応用 123

圧縮しても、その熱交換面積はほとんど変化しません。それに加え通過エアーを乱流にする効果はより強くなり、良好な熱交換が行われ、通過エアー温度と発熱体温度の差が小さくなり、より高温,長寿命のヒーターが実現しました。

また発熱体の外形サイズが約1/2になるために、横方向(エアーの流れと直角方向)への放熱ロスが約1/2になります。
ただしSAH型熱風ヒータは元々80%〜90%の熱効率をもっており、熱ロスは10%〜20%でした。そのためHD-coilに変えて熱ロスが半分になったとしても、総合熱効率の改善は5%〜10%の改善にしかならず、実際には3〜7%の改善となっています。これは一見大きな数値ではありませんが、熱損失が約半分になるということは、周囲環境への熱影響が大幅に少なくなるということです。


上:従来の密着花巻コイル発熱体       
下:同じものを圧縮して作成したHD-coil

HD-coilを伸ばしてみたもの
広い熱交換面積が凝縮されています
 
   
   A HD-coil支持方式の改善              

HD-coilは約1/2のサイズになるために、従来と同じサイズのヒーターに2倍の電力容量を入れようという考えがでてきます。しかし同じサイズの外形のヒーターケースに2倍の電力を入れると当然ながら流量は約2倍になり、そのため圧損は約4倍になります。さらに発熱体の熱交換面積が2倍になるので、圧損は更に2倍になります。それに加えて大きな電力容量の電熱線は太いのでエアーが通過する隙間は小さくなり、これの影響で更に圧損が増えます。結果として電力を2倍にすると圧損は約10倍になります。つまり発熱体に加わる風圧が約10倍になるということです。

そのため、従来と同じ発熱体支持構造では支持構造の方が耐えなくなりました。これを改善するために下図の様な構造を考案し、採用しています。

発熱体の中心構造材であるセラミック芯棒に1周する溝を掘ります。
幅0.5mm, 深さ0.2〜0.3mm
そこにニクロム線を巻き付けて縛ります。その左側に更にもう一回巻き、縛ります。
発熱体を受け止め、エアーは通過させるためのコイルリンクを入れます。これはセラミック芯棒を正確に中心に保つための機能も有します。 
 HD-coil発熱体を挿入し、電流供給棒と溶接します。これで強い風圧が加わると、それを受け止めるコイルリングが前方に押し出されますが、ニクロム線を乗り越える事は出来ないので、そこで停止します。またニクロム線は前進するコイルリングにより溝に押し込まれる方向の力が働くため、溝から脱落する事なく、数十kgfの力に耐えます。

この支持方式にはもう一つのメリットがあります。発熱体コイルを支えるコイルリングは電気的に絶縁された状態です。
従来方式の支持リングは電流供給棒と電気的に一体であったため、振動が加わると支持リングと発熱体の接触部分で弱い電気火花が発生する事がありました。そのため振動が継続的に長時間加わると発熱体が火花で部分的に消耗し、寿命が短くなる、という問題がありました。新構造はコイルリングが電気的に絶縁されているため、電気火花の発生がなく、前記の様なトラブルの発生がありません。

  

     

 
 B 熱風ヒーター新構造 (Sシリーズ構造)     

  従来のHシリーズその他のヒーターケース構造を長年
  蓄積された改良ご要望に沿って大幅に改良したもので
  す。考えられるあらゆる改良を盛り込んでいます。 




 


      Sシリーズ(SAHD-10S,SAHD-15S)の特徴のまとめ                                                    

@

 
リード線引出し方法の改良

リード線引き出し方法を改良したので、より狭いスペースにも組込可。
  

A


 
2分割構造の採用

発熱体部とノズル部を分離構造としたので、部分交換が可能。
  

B

 
耐エアー圧力の向上

2分割できるセパレート構造を採用しながらも耐圧約4気圧(0.4MPa)を達成。 オプションで0.6MPa以上への対応も可能。
  

C

  
低分子シロキサン対策

標準で低分子シロキサン対策。電線はフッ素樹脂被覆,ゴム部品はフッ素ゴム,接着剤は耐熱エポキシ(200℃)。更に製品全体を全数150℃,10分間の熱処理
  

D

 
R熱電対に対応,2点センサも可

オプションで2点温度センサー(熱風温度と発熱体温度)対応。エアー断にも対応でき、予熱ホットスタートにも利用可。標準のK熱電対に加えR熱電対(高温用)も選択可能。高温(800℃以上)にはこのR熱電対を採用するか、又はノズル部に外付けのセンサーを設置する。
   

E

 
RoHS完全対応

RoHSに対応。また輸出規制に関して「非該当」。
  

F

 
簡易断熱構造による熱効率の向上と本体温度の低下

SUS外管と内部の石英管管の間に金属箔による簡易断熱構造を採用。これにより金属ケースの最高温度が約40℃低下。熱ロスも減少して熱効率改善
  

G
 
 
ロボットに取り付けての使用に対応(耐屈曲性ケーブルをオプション設定)

ロボットに取り付けての使用では、従来品は特にセンサーリード線が比較的短時間で疲労断線するトラブルが多かった。これに対処するために熱電対リード線に耐屈曲性のロボットケーブルをオプション設定。
 

       特性 SAHD200v-440w  
  


     特性 SAHD200v-1kw

 

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